医師が開業する理想の年齢とは？年齢別のメリットと失敗しないためのポイント

2024年9月13日

医師にとって、開業は自らの理想とする医療を提供し、収益を向上させる大きなチャンスです。しかし、開業には適した年齢やタイミングが重要となります。

この記事では、医師が開業する理想の年齢や、30〜50代それぞれの年齢層での開業のメリットとデメリットを詳しく解説します。また、開業を決意する理由や具体的な準備手順についてもお伝えするので、自身のキャリアプランを考える上での参考にしてください。

医師が開業する平均年齢

日本医師会が2009年に行った調査によると、医師が新規開業する際の平均年齢は、41.3歳でした。この年齢は、医師が一定の臨床経験と資金を蓄えた後に開業を決意するためと考えられます。また、開業後の年数が短いクリニックほど医師の年齢が高い傾向が見られます。

近年では、開業年齢が上昇する傾向にあり、開業の準備に時間をかける医師が増えています。これにより、開業後の経営リスクを減少することが期待されるでしょう。

出典： 社団法人日本医師会｜開業動機と開業医（開設者）の実情に関するアンケート調査

医師が開業する適正年齢

クリニックの開業には年齢制限がありませんが、必要な能力や経験、今後のライフプランを踏まえるとタイミングが非常に重要です。医師としてのキャリア、準備期間、開業医として働く年数のバランスを考慮すると、クリニックの開業は30代から40代の時期が適しています。

特に40歳前後は、必要なスキルがしっかり備わり、ある程度の自己資金も準備できます。また、開業時の借入金の返済にも十分な期間を確保できるため、適齢期と言えるでしょう。

一般的に借入金の返済期間は10年から20年であり、金融機関は65歳ぐらいに返済が終わると見込んで融資を行います。これを踏まえると、45歳くらいまでには開業を決断するのが望ましいでしょう。

医師が定年する年齢の目安

医師の定年に関する具体的な年齢制限はありませんが、厚生労働省の「令和2年医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、2020年時点での診療所の開設者や法人代表者の平均年齢は62歳となっています。このデータは、開業医の高齢化が進んでいる現状を示しています。

出典： 厚生労働省｜令和2（2020）年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 P38

一方で、開業医は勤務医とは異なり定年制度がないため、体力と気力が続く限り長く働き続けることが可能です。

日本医師会の「日医総研ワーキングペーパー」によると、開業医の引退予定年齢の平均は73.1歳、最頻値は75歳です。また、70歳以上で開業医を続ける医師の割合は21.8％に達し、60歳以上では約半数が現役を続けています。

これらのデータから、引退は70歳から75歳の間に行われることが多いものの、実際にはそれ以上の年齢まで働き続ける医師も少なくないことが分かります。

医師としてのキャリアを続けるには、体力や健康状態の維持が重要です。患者との信頼関係を築きながら、長期的な視点で自身のライフプランを考えることが求められます。

出典： 日本医師会総合政策研究機構｜日医総研ワーキングペーパー P24

医師が開業を決意する理由

医師がクリニックの開業を決意する理由はさまざまです。日本医師会のアンケート調査によると、主な動機は以下の3つに分類されます。

1. 理想の医療を提供するため

2. 経営も含めたやりがいを得るため

3. ライフステージに合わせた労働環境を追求するため

それぞれ解説します。

出典： 社団法人日本医師会｜開業動機と開業医（開設者）の実情に関するアンケート調査

理想の医療を提供するため

日本医師会の調査によると、開業の理由として最も多かった理由は「理想の医療の追求」で42.4％でした。

勤務医は、病院の経営方針や診療コンセプトに従わなければならず、理想の医療を実現することが難しい傾向にあります。

その一方で、開業医は自身の裁量でクリニックを経営し、自分の目標とする医療水準や診療スタイルを実現することが可能です。この自由度と地域医療への貢献意識が、開業の大きな動機となります。

経営も含めたやりがいを得るため

医師の中には、経営者としてのやりがいを求めて開業を決意する人もいます。

勤務医では、医療行為が主な業務です。その一方で、開業医は経営者としての業務も行わなければならず、集患施策や広告宣伝、人材マネジメント、業者選定など、多岐にわたる業務をこなすことになります。これらの新しい挑戦にやりがいを見出す医師も多く、開業を決意する理由の一つとなっています。

ライフステージに合わせた労働環境を追求するため

勤務医の過重労働や精神的なストレスを避け、ライフステージに合わせた柔軟な労働環境を求めて開業を目指す医師も少なくありません。

育児や介護など家庭の事情を考慮し、家の近くにクリニックを開業するケースも見られます。また、過重労働による負担や将来性の不安から、自己の専門を活かした医療を提供しつつ、仕事とプライベートのバランスを取りやすくするために開業を選ぶこともあります。

【年齢別】医師が開業するメリットとデメリット

医師が開業を決意する際、そのタイミングには年齢が大きく影響します。各年代での開業にはそれぞれ利点と課題があるため、自身のキャリアやライフステージを考慮した計画が重要です。

以下に、30代、40代、50代のそれぞれの時期におけるメリットとデメリットを解説します。

30代での開業

医師が30代で開業する場合、将来性を見込まれて融資の審査が通りやすい傾向にあり、自己資金が少なくても開業できる可能性は高いと言えるでしょう。若さとエネルギーを活かし、最新の医療知識や技術を導入しやすい点も魅力です。

しかし、30代では医師としての経験や実績が不足しているため、患者からの信頼を得るのが難しい場合があります。資金調達も自己資金の不足により困難になることがあり、経営のリスクが高くなるでしょう。

40代での開業

40代の医師は開業に最適な時期とされ、必要なスキルや自己資金が十分に備わっていることが多い傾向にあります。借入金の返済期間も10年から20年と長く、金融機関からの信頼も高いため、融資が受けやすいでしょう。

ただし、40代後半になると返済期間の確保が難しくなるため、遅くとも45歳までには開業を決断する必要があります。また、家庭や育児などのライフステージとの両立も考慮する必要があります。

50代での開業

50代で開業する場合、経験や知識が豊富で、信頼性が高いと言えるでしょう。最近の50代は健康で活動的なため、まだまだ現役で働く意欲や体力があります。

しかし、年齢が上がると働ける期間が短くなり、融資の審査も厳しくなります。そのため、初期投資を抑える工夫が必要です。また、体力や視力の低下といった身体的な問題も考慮しなければなりません。

開業に向けて失敗しないためのポイント

クリニック開業時の年齢が高くなっている近年の傾向を踏まえ、50代での開業も増えています。しかし、経営リスクを考慮すると、早めの準備が得策だと言えるでしょう。

開業に向けて失敗しないための具体的なポイントは、以下の通りです。

1. 開業の経営理念や方針を決定

2. 適切な場所の選定

3. 綿密な事業計画の作成

4. 自院に適した医療機器の選定

5. 十分な資金調達

6. 信頼できるスタッフの雇用

7. 効果的なマーケティング戦略

8. 法的・規制の遵守

これらのポイントを押さえることで、開業の成功確率を高め、長期的に安定した経営を実現することができるでしょう。

開業の経営理念や方針を決定

開業時には、どのような患者にどのような医療を提供したいかを明確にする診療方針が重要です。
医師であり経営者でもあるため、このコンセプトにより基本理念や方針が確立し、診療内容が明確化されます。これがぶれると患者がクリニックを選ぶ基準が曖昧になり、集客が難しくなるため、診療方針に基づき、開業地や必要な医療機器を選定することが大切です。

適切な場所の選定

クリニックの立地は開業の成功を左右する重要な要素です。駅やバス停から近い場所や競合が少ない地域を選ぶと集患がスムーズになり、経営が軌道に乗りやすくなります。
診療コンセプトとターゲットとする患者層を考慮し、自分に合った開業場所を、早めに確保すると開業の成功につながりやすくなるでしょう。

綿密な事業計画の作成

事業計画書は、必要な開業資金の決定、資金調達、開業後の収支見込みを含めた詳細な計画を作成するものです。
現実的な計画を立て、過剰投資を避けることが重要です。無理のない収支計画を立てるために、見込み患者数や生活費を考慮し、現実的な数字を出すようにしましょう。

自院に適した医療機器の選定

開業コンセプトに合った医療機器を選ぶことも重要です。自院の診療科目や診療スタイルに応じて必要な機器を選定し、費用対効果を考慮しましょう。

医療機器のほか、電子カルテシステムやWeb問診などの診療支援システムを導入し、診療の質を向上させることが求められます。

開業を機に、電子カルテを導入するケースも少なくありません。院内にサーバーを設置する「オンプレミス型」電子カルテだけでなく、クラウド上のサーバーを利用する「クラウド型」の導入も選択肢のひとつです。

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弊社では、クラウド型電子カルテ「エムスリーデジカル」を提供しています。電子カルテレセコン一体型、ORCA連動型に対応しており、レセコン単体、電子カルテ単体でのご提供も可能です。レセコン単体では初期費用無料、月額14,800円（税抜）からコストを抑えて利用開始できます。無料体験も可能なので、お気軽にお問い合わせください。

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十分な資金調達

可能であれば、開業資金と運転資金の総額の2割程度を自己資金で用意しておくことが望ましいでしょう。テナントで一般的な内科を開業する場合は、1,000万円以上の貯蓄が理想です。

電子カルテの導入などには、IT補助金や各種助成金を活用するのも有効な手段です。これらの活用によって初期投資を抑えることができ、運転資金を確保しやすくなります。

また、設備投資や運営費用を含めた総合的な資金計画を立てることが重要です。資金調達の際には、事業計画書を詳細に作成し、収支予測やリスク管理を明確にしておくことで、金融機関の審査をクリアしやすくなります。

信頼できるスタッフの雇用

スタッフの雇用においては、良好な人間関係を築くことが重要です。特に、少ないスタッフで運営する場合、円滑なコミュニケーションを心がけることで、患者の評判も向上します。

採用時には、スキルや経験だけでなく、人柄や価値観がクリニックの理念と一致しているかを確認することが大切です。

また、定期的な研修を行い、スタッフのスキルアップを図ることで、業務の効率化とサービスの質向上が期待できます。働きやすい職場環境を整えることも、スタッフの定着率を高めるポイントです。
開業する際、適切な労働条件や福利厚生の充実、働き方の柔軟性を提供することが求められます。

効果的なマーケティング戦略

開業医は経営にも携わるため、経営ノウハウを学ぶ必要があります。30代から40代の時期は働きながら経営ノウハウを学ぶのに最適な時期です。

ホームページやポスティングチラシなど、Webと紙媒体を活用した宣伝・広告戦略も効果的です。医療広告ガイドラインに沿った適切な広告を行い、地域に根ざしたクリニックを目指しましょう。

法的・規制の遵守

開業に当たって「診療所開設届の保健所への届出をはじめとする各種手続きが必要です。これらを適切に行い、法的・規制を遵守することで、開業後のトラブルを避け、円滑な運営を実現することができるでしょう。
また、診療報酬の請求や税務処理などの法的手続きも含め、専門家のアドバイスを受けるのも有効な手段です。

まとめ

今回は、医師が開業する理想の年齢と失敗しないためのポイントについて解説しました。

医師が開業を決意する際の適正年齢、年齢別のメリットとデメリット、そして成功するための重要なポイントを理解することが、クリニック経営の成功につながります。

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