クリニック開業の備品リスト|必要な理由や選ぶポイントも解説
2024年10月30日
クリニックを開業に必要な備品リストは、開業準備をスムーズにするために欠かせません。しかし、備品リストを作成するタイミングや、どのような基準で備品を選ぶべきか判断に迷うことも多いのではないでしょうか。
この記事では、クリニック開業時に備品リストが必要な理由や作成するタイミング、備品リストの例、選ぶポイントを解説します。
目次
クリニック開業に備品リストが必要な理由
クリニックを開業する際に備品リストが必要な理由は、忙しさにより準備が不足する可能性が高いためです。
クリニックの運営には医療機器や家具、事務用品、消耗品など、さまざまな備品が必要になります。しかし開業が近づくにつれて、備品集め以外にもやるべきことが多くなり、時間的な余裕がなくなります。
備品リストを事前に作成しておかないと、何を準備したのかが曖昧になり、最悪の場合、開業後、不足に気付いて診療に支障をきたすことがあります。
スムーズに開業を迎えるためにも、余裕を持って備品リストを作成し、必要な備品を確実に準備しましょう。
クリニック開業までのスケジュール
クリニックの開業準備は、約2年前から始めるのが理想的です。開業1年前までには、事業計画の作成や診療圏調査、コンセプト・診療方針の決定などを行います。
その後、次のようなスケジュールに沿って準備を進めていきます。
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クリニック開業1年前〜6か月前
- 物件選び・契約
- 内装工事
- 資金調達
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クリニック開業6か月前〜3か月前
- 備品リスト作成
- 医療機器・医療設備などの選定
- スタッフ募集開始
- 退職表明
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クリニック開業3か月前〜直前
- 消耗品などの選定
- スタッフ採用
- 広報活動
- 各種行政手続き
- 医療機器などの搬入作業
備品リストの作成は開業6か月前に始める
備品リストの作成は、クリニック開業の6か月前に開始しましょう。
スリッパなど小さな物品であればすぐに購入できますが、医療機器や大きな家具などは選定から納入まで時間がかかることがあります。
特に、電子カルテや会計システムなどの備品は、製品ごとに特徴や使い勝手が異なるため、余裕を持って選定を行うことが重要です。
また、クリニックの開業が近づくにつれ、さまざまな手続きを同時並行で行う必要があります。開業までのスケジュールに照らし合わせて、どの時期に何を行うかを決めることが大切です。
一般的なスケジュールから逆算すると、開業6か月前に備品リストを作成すれば、余裕を持って準備を進められるでしょう。
備品と消耗品の税務上の違い
消耗品は備品の一部として説明されることが多いですが、備品と消耗品は税務上の定義が次のように区別されます。
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備品:金額が10万円以上かつ使用可能期間が1年以上のもの
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消耗品:金額が10万円未満あるいは使用可能期間が1年未満のもの
例えば、事務用品やトイレットペーパーなど、使用していくうちに状態が変化し、本来の機能を失うものは「消耗品」、それ以外の耐久性のあるものは「備品」と考えると覚えやすいでしょう。
ただし、開業準備において、備品と消耗品を厳密に区別する必要性はありません。この記事では消耗品も含めて「備品」と表現します。
【カテゴリー別】クリニック開業に必要な備品
クリニックで必要な備品は、次の4つのカテゴリーに大別されます。
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医療機器・医療設備
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家具・家電
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大型事務用品
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小型事務用品・消耗品
カテゴリーごとに備品を整理しておくと、漏れが少なくなり、備品リスト作成の効率化につながるでしょう。
1. 医療機器・医療設備
医療機器や医療設備は、診療に用いる道具全般を指します。例えば、小物類ではハサミやメス、中型の機器では人工呼吸器、大型の機器になるとX線撮影装置などが含まれます。
診療科によっては、中型・大型の機器が必要ないこともあるでしょう。中型・大型の機器が必要な場合、各製品の機能を確認しながら慎重に選定するため、納入まで数か月かかることも少なくありません。
ご自身の診療科に必要な医療機器や医療設備を洗い出して、効率よく備品の準備を進めましょう。
2. 家具・家電
家具や家電は患者用と医師・スタッフ用があります。例えば、待合室に設置する椅子やソファ、受付の会計機器、テレビやエアコンなどが該当します。
小物は近くの家電量販店で十分に用意できますが、大型の家具や家電はクリニックのイメージに合わせる必要があるため、選定に時間がかかるケースもあるでしょう。余裕を持って準備に取り掛かるのが大切です。
3. 大型事務用品
大型事務用品は、会計やレセプトの請求に必要な大きな備品を指します。例えば、自動精算機やレセプトコンピューター(レセコン)などがこのカテゴリーに含まれます。
政府が医療のDX化(デジタルトランスフォーメーション)を推進していることもあり、大型事務用品の需要は増加傾向にあります。
4. 小型事務用品・医療衛生材料など
小型事務用品には、ボールペンなどの文房具類、コピー用紙、紙カルテや診察券などが含まれます。
医療衛生材料は、診療で用いる消毒液、包帯、ガーゼ、医師やスタッフが着用する白衣・ユニフォームなどが該当します。
これらは多くが消耗品であり、定期的な購入が必要です。したがって無理なく継続的に購入できる業者選びが重要です。また、災害時には備蓄で対応しなければならないため、開業準備の段階から必要なストック量を検討しておくと良いでしょう。
【場所別】クリニック開業に必要な備品リスト
クリニック開業時の備品リストを作成する際には、各場所ごとに分けて考えると整理がスムーズです。
実際の作成時にはエクセルなどでチェックリストを作り、発注が完了したらチェックを入れて準備を進めると良いでしょう。
ここでは、クリニック内の8つの場所に分けて、一般的に必要な備品リストを紹介します。
- 玄関
- 受付(患者側)
- 受付(スタッフ側)
- 待合室
- 診察室・診察時
- トイレ
- スタッフルーム
- バックヤード(倉庫)
1. 玄関の備品リスト
クリニックの玄関で必要な備品は次の通りです。
- 玄関マット
- 手指消毒用スタンド
- 手指消毒液
- 傘立て
- 靴箱
- 靴ベラ
- スリッパ
- スリッパラック
土足可能なクリニックの場合、靴箱・靴ベラ・スリッパ・スリッパラックは不要です。
玄関は、クリニックの第一印象を決める重要な場所です。見た目の雰囲気や清潔感だけでなく、クリニックのコンセプトとも合致するデザインを選ぶことが大切になります。
玄関マットは、できるだけ高品質なものを選びましょう。靴に付着した泥やホコリを室内に持ち込みにくくすれば、清潔・衛生面でクリニックの印象が良くなります。
また、玄関の見栄えが良い場所に絵画や観葉植物を設置すれば、より良い印象を与えることも可能です。
2. 受付(患者側)の備品リスト
クリニックの受付で、患者側に必要な備品は以下の通りです。
- 非接触式体温計
- 飛沫対策パーテーション
- 診察券入れ
- 筆記用具
- 手荷物台
- 杖ストッパー
- 老眼鏡
- 時計
- カレンダー
- 電卓
新型コロナウイルスの感染拡大にともない、受付での体温測定が一般的になりました。手持ちで測定する場合もありますが、スタンド型で体温を自動測定できる機器も普及しています。予算やクリニックの方針に沿って選定しましょう。
診察券の提示をお願いする場合、診察券入れを用意しておくと対応がスムーズになります。来院時にすぐ分かるようなデザインを選ぶと、患者も安心できるでしょう。
高齢者の来院が多いクリニックの場合、杖ストッパーや老眼鏡を用意することで、患者に寄り添った環境を整えられるでしょう。
3. 受付(スタッフ側)の備品リスト
クリニックの受付で、スタッフ側に必要な備品は次の通りです。
- 問診票・バインダー
- 診察券発行システム
- カルテラック(紙カルテの場合)
- 筆記用具
- パソコン・周辺機器
- プリンター・コピー用紙
- シュレッダー
- ゴミ箱
- 釣銭トレー
- 自動精算機・セミセルフレジ
電子カルテを導入しない場合は、紙カルテを保存するためのカルテラックが必要です。
また、業務効率化と利便性の向上を図るために、自動精算機やセミセルフレジの導入がクリニックで増えていますが、導入コストに注意が必要です。
4. 待合室の備品リスト
クリニックの待合室に必要な備品は、次の通りです。
- ソファ
- テレビ
- 壁掛け時計
- ゴミ箱
- 雑誌・新聞
- マガジンラック・本棚
- 空気清浄機・加湿器
- ウォーターサーバー
小児科など、子ども連れの患者が多い診療科の場合、キッズスペースの設置も考慮しましょう。危険性の低い玩具や、ぶつかっても大丈夫なように衝撃を吸収する素材を使った環境を整えることで、安全な空間を提供できます。
5. 診察室・診察時の備品リスト
クリニックの診察室や、診察時に必要な備品は次の通りです。
- 診察机
- 診察ベッド・枕
- 診察用ライト
- 椅子(医師・患者用)
- 患者用荷物入れ
- 体重計
- 身長計
- パルスオキシメーター
- 聴診器
- 注射台
- 消毒器具
- 感染予防用品(マスク・ゴム手袋など)
- パソコン・周辺機器
- 電子カルテ
- 時計・タイマー
診察室はクリニックのメインの場所であるため、備品の準備は念入りに行いましょう。
患者・医療者ともに感染のリスクが高い場所なので、消毒系の備品はストックを切らさないように注意が必要です。
6. トイレに必要な備品リスト
クリニックのトイレに必要な備品は、次の通りです。
- トイレ用スリッパ
- トイレットペーパー
- 消臭剤
- ゴミ箱
- ペーパータオル・ハンドドライヤー
- 清掃用具
産婦人科や婦人科など、女性が多く来院するクリニックでは、生理用品を用意すると患者満足度を高められるでしょう。男性医師の場合、女性スタッフに助言をもらうのも大切です。
7. スタッフルームの備品リスト
スタッフルームに必要な備品は、次の通りです。
- テーブル
- 椅子
- 食器類(コップ・スプーンなど)
- 冷蔵庫
- 電子レンジ
- ロッカー・名札ラック
- 掃除用具
スタッフがリラックスできる環境を整えることも、クリニック運営において重要です。
十分なスペースを確保し、医師とスタッフの交流を増やすと、職場の信頼関係が築きやすくなるでしょう。
8. バックヤード(倉庫)の備品リスト
備品の倉庫となるバックヤードに必要な備品は、次の通りです。
- 消耗品のストック
- 防災備蓄品(水・非常食・毛布など)
- 予備の白衣・ユニフォーム
- 工具
- 掃除用具
防災備蓄品は、スタッフの増加に伴い、数が不足する可能性があります。開業準備の際には、定期的な見直しの計画を立てておくことが重要です。
クリニック開業に必要な備品選びのポイント
クリニックの備品選びには、いくつかの重要なポイントがあります。これらのポイントを把握した上で準備を進めれば、開業後のトラブルを避け、業務に集中できるでしょう。
1. クリニックのコンセプトに適した備品を選ぶ
クリニックの開業では、コンセプトによって適した備品を選びましょう。なぜならコンセプトによって必要な備品は異なるからです
例えば、子ども連れの患者が多い場合は、子ども向けの環境を整える必要があります。また、競合が少ない場合は患者が増え、待合室が混雑する可能性があります。その場合、待合室の椅子の数を増やしたり、配置を工夫したりする必要があるでしょう。
備品を選ぶ際には、クリニックのコンセプトに照らし合わせながら進めましょう。
2. 診療内容に適した備品を選ぶ
診療内容によって診察室で使用する備品は異なるため、クリニックに適した備品を選ぶことも大切です。
例えば、整形外科で骨折や変形性関節症などを診療する場合、松葉杖や車椅子が必要になります。小児科では、注射の不安を和らげるための玩具が求められます。
開業後に困らないよう、自院の診療内容に適した備品を準備しましょう。
3. クリニックのスペースに合わせる
クリニックのスペースには限りがあるため、スペースを元に備品を選ぶことも大切です。計画性を持って備品を準備すると、スペースの有効活用にもつなげられます。
例えば、診察室に設置するモニターを壁掛けタイプにすると省スペース化が図れます。院内のスペースを把握して、適切な備品を選びましょう。
4. 費用対効果が高い備品を選ぶ
備品を選ぶ際には、費用対効果が高い備品を選ぶことも大切です。クリニックの開業では予算が限られているため、その中で最も効果的な備品を選ぶ必要があります。
例えば、医療機器はリースやレンタル、サブスクなど、初期費用を抑える方法もあります。
限られた予算の範囲内で、クリニックに最適な備品を検討しましょう。
5. 保証やサポートも加味する
備品を選ぶ際は、保証やサポートの内容も含めて検討しましょう。医療機器は長期間使用する前提でクリニックに導入するため、価格や性能以外にもアフターフォローの有無は非常に重要です。
メーカーによっても保証期間やサポート内容は異なるため、十分に比較して備品を選びましょう。
6. 電気設備工事が必要か確認する
電気設備工事が必要な備品かどうかも確認して選びましょう。医療機器に必要な電気容量が不足している事例は、よくあります。
例えば、一般のオフィスビルは事務所の入居を前提としているため、クリニックで使用する医療機器などの電気容量には対応できない可能性があります。
大きな医療機器は早めに選定し、電気設備工事の必要性も検討しましょう。
クリニック開業の備品に「エムスリーデジカル」も選択肢の1つ
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出典: クリニックの電子カルテ・レセコン導入にエムスリーデジカル
まとめ
クリニック開業に備品リストが必要な理由や作成するタイミング、備品リストの例、選ぶポイントを解説しました。
場所ごとに多くの備品が必要であり、抜け漏れがあると開業後に慌てて準備することになりかねません。開業6か月前から備品リストを作成すれば、スムーズに準備を進められます。
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この記事で解説した選ぶポイントや備品リストの例を参考にして、安心して開業準備を進めましょう。