電子カルテの保存期間は?紙カルテとの違いや保存方法の注意点を解説
2023年11月13日
「電子カルテを導入したものの、データはいつまで保存しておけばよいのか」「電子カルテへ移行する際、旧紙カルテはいつまで保存しておけばよいのか」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
電子カルテや紙カルテの保存期間は、法令によって義務付けられており、適切に管理されなければなりません。
この記事では、電子カルテの保存期間に加え、カルテ保存方法の注意点を解説します。
目次
電子カルテの保存期間は5年間
「保険医療機関及び保険医療担当規則」において、電子カルテの保存期間は5年間と義務付けられています。
また、カルテ以外の「帳簿及び書類その他の記録」に関しては、3年間保存しなければなりません。
(帳簿等の保存)
第九条 保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から三年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあつては、その完結の日から五年間とする。
なお、診療日から5年間ではなく、一連の診療が完了した「完結の日」から5年間となるため注意が必要です。
電子カルテの診療録は電子上で作成されるため、紙カルテのように原紙が存在しません。電子カルテ自体が診療録の文書そのものであるため、保存に関するルールは、電子カルテでも紙カルテでも同様の扱いとなります。
オンライン資格確認等システムにおける6情報の保存期間
政府は医療DXを推進しており、全国的に電子カルテ情報を医療機関等で共有できる仕組みを構築しています。令和5年4月から「オンライン資格確認」の導入が義務付けられました。
ここでは、令和5年厚生労働省の「とりまとめ(案)」で公表されているオンライン資格確認等システムにおける6情報の保存期間について解説します。
オンライン資格確認等システムとは
オンライン資格確認等システムとは、安心・安全で質の高い医療を提供していくデータヘルスの基盤となる仕組みのことです。
オンライン資格確認の導入によって、マイナンバーカードの保険証を利用し、本人確認やさまざまな情報閲覧・共有が可能となります。
オンライン資格確認等システムの6情報とは
オンライン資格情報等システムにおける6情報とは、以下の6つです。
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傷病名
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アレルギー情報
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感染症情報
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薬剤禁忌情報
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検査情報
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処方情報
6情報の保存期間
6情報の保存期間は、以下の表の通りです。
項目 | 保存期間※登録日(受診日)から |
---|---|
傷病名 | 5年間程度 |
アレルギー情報 | 5年間程度 |
感染症情報 | 5年間程度 |
薬剤禁忌情報 | 5年間程度 |
検査情報 | 1年間 |
処方情報 | 100日間 |
出典: 厚生労働省|オンライン資格確認等システムにおける6情報の保存期間
傷病名・アレルギー情報・感染症情報・薬剤禁忌情報の保存期間は基本的に5年間程度です。しかし、保存期間が経過した場合でも継続的な保存が必要だと医師が判断した情報は、長期間の保存が求められています。
検査情報・処方情報は、保存期間が経過した場合でも、直近3回程度の情報は保存することとされています。なお、処方情報に関しては、今後電子処方箋の仕組みが整備される中で、目的に応じた保存期間を検討するとしているため、今後の動向に注目しておきましょう。
電子保存の3原則とは
電子カルテを保存する際、電子保存の3原則を満たしておくことが重要です。
電子保存の3原則とは「診療録及び診療諸記録の電子媒体による保存に関するガイドライン」で定められている、以下3つの基準のことです。
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真正性の確保
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見読性の確保
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保存性の確保
出典: 厚生労働省|診療録等の電子媒体による保存に関する解説
それぞれ詳しく解説します。
真正性の確保
真正性の原則では、第三者から見て作成の責任と所在が明確であり、虚偽の入力や書き換え、消去、改ざんがないことが求められます。
電子カルテは、代行入力や記録の共同責任者による追記、外部からの不正侵入などのリスクがあり得ます。そのため、カルテ入力の責任の所在を明確にするため、以下の対策が必要です。
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作成責任者の識別および認証(ID・パスワード)
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作成責任者による確定操作
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識別情報の記録
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更新履歴の保存
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機器やソフトウェアの品質管理
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不正入力に対するセキュリティ対策
見読性の確保
見読性の原則では、電子カルテに保存された内容を、必要なタイミングで見せられるようにしておくことが求められます。
電子カルテは、医師や看護師などの医療スタッフが見るだけでなく、患者・家族にも見せる機会があります。今後、電子カルテの情報共有が推進されれば、ますます見読性を確保しておくことが求められるでしょう。
電子カルテの情報が分散されることなく、適切で安全なシステムの運用管理が必要です。
保存性の確保
保存性の原則では、法で定められた保存期間中、真正性や見読性を確保された状態で保存されていることが求められます。
電子データは、不適切な保管や取り扱い、記録媒体の劣化により、情報が読み取れなくなる可能性はゼロではありません。ウイルスや不適切なソフトウェアによりデータ破損や消去するリスクもあるでしょう。
また、近年、医療機関を狙ったランサムウェアによるサイバー攻撃によって、電子カルテシステムが使用できなくなる事例も発生しています。
電子カルテの保存性を確保するため、記録媒体の劣化対策、ソフトウェアの管理、こまめなバックアップなどの対策が必要です。
電子カルテ移行後の紙カルテの保存方法と注意点
ここでは、紙カルテから電子カルテに移行する場合の、旧カルテの保存方法や保存する際の注意点を解説します。
紙カルテの保存方法
電子カルテに移行する場合、法律上、旧紙カルテを保存しておく義務はありません。しかし、万が一訴訟などに発展する事故が発生した場合に備え、保存しておくケースもあるでしょう。
旧紙カルテを保存する方法は、以下の3つです。
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院内で保管する
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外部倉庫で保管する
-
電子化して保存する
それぞれ解説します。
院内で保管する
まずは、院内の空きスペースに保管する方法です。
紙カルテは、電子カルテと同様、5年間の保存期間が必要となります。そのため、患者数が多い場合や医療機関の規模が小さい場合、カルテの収納場所を確保できない可能性が考えられます。
外部倉庫で保管する
院内スペースの確保が難しい場合、一定の基準のもとで、外部保存が認められています。具体的な条件は、以下の通りです。
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記録が診療の用に供するものであることにかんがみ、必要に応じて直ちに利用できる体制を確保しておくこと。
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患者のプライバシー保護に十分留意し、個人情報の保護が担保されること。
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外部保存は、診療録等の保存の義務を有する病院、診療所等の責任において行うこと。また、事故等が発生した場合における責任の所在を明確にしておくこと。
外部保管する場合、セキュリティ対策が徹底されている、過去に問題を起こしていない専門業者であることをしっかり確認しましょう。
電子化して保存する
旧紙カルテをスキャナ等で電子化して保存するのも1つの方法です。
ただし「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第5.2版)」では、対象となる患者等に、事前に電子化して保存することを周知するよう求めています。また、スキャナによる電子化の実施前には、必ず実施計画書の作成が必要です。
なお、カルテをスキャナで取り込んでも全く同じものにはならないため、可能であれば外部保存も含め、紙カルテの保存を検討するよう推奨しています。
スキャナによる読み取りの際、改ざんを防止するため、作業責任者が電子署名法に適合した電子署名を遅滞なく行うことが必要です。
電子化した紙カルテの取り扱い
スキャンして電子化したカルテは、電子署名・タイムスタンプが押されることで、紙カルテ同様の効力を持つため、スキャン後の紙カルテは破棄してもよいとされています。
旧紙カルテを破棄する場合、事前に作成する実施計画書に「破棄までの期間および破棄方法」を記載しなければなりません。
紙カルテを破棄する方法は、以下の3つです。
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溶解
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粉砕
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焼却
紙カルテには個人情報が記載されているため、破棄する場合、機密文書処理事業者に委託し、セキュリティ対策は万全かどうか、しっかり確認しましょう。
まとめ
電子カルテの保存期間は、紙カルテと同様、診療が完結した日から5年間です。電子カルテの保存に際し、電子保存の3原則である「真正性」「見読性」「保存性」を確保することが求められます。
令和5年4月から導入が義務付けられた「オンライン資格確認」システムや、医療DXの推進によって、電子カルテの保存期間は常に変化していくと考えられます。また、電子化に伴い、旧紙カルテの取り扱いも把握しておく必要があるでしょう。
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