クリニック継承とは?メリット・デメリットや費用相場・流れを解説
2023年1月24日
クリニック継承とは、すでに開業しているクリニックを譲り受けて開業することです。土地や建物などを探す必要がなく、開業までの時間を短縮できるメリットがある反面、注意点もあります。この記事では、クリニック継承の概要、メリット・デメリットや費用相場、流れ、注意点を解説します。
目次
クリニック継承とは
クリニック継承とは、すでに開業しているクリニックを譲り受けて開業することです。土地や建物だけでなく、かかりつけの患者やスタッフも引き継ぐことができるため、開業リスクを抑えやすく、開業までの時間も短縮できます。
継承と承継の違い
「継承」と似たことばに「承継」があります。
継承は、土地や建物等の財産を引き継ぐなど、具体的な引き継ぎのことを指します。一方、承継とは、先代から事業に対する信念・義務など、抽象的な概念も含めて受け継ぐことが多いです。
クリニック継承のニーズが増加傾向にある背景
クリニック継承ニーズが増加傾向にある背景は、主に以下の要因が考えられます。
-
医師の高齢化
-
医師の増加
令和2年(2020年)厚生労働省のデータによると、医療施設に従事する医師を年齢階級別にみると、50〜59歳が最も多い結果となっています。また、施設の種別ごとの平均年齢は、病院45.1歳、診療所60.2歳でした。
出典: 厚生労働省|令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概要
勤務医と違って、クリニックで働く医師には定年がありません。とはいえ、年齢を重ねるごとに引退を考える医師は少なくないでしょう。クリニック経営を継続するため、身内や第三者にクリニックを継承するケースは今後も増えていくと考えられます。
医師の増加により、継承ニーズも高まりつつあります。医師数は年々増加しているものの、病院数は減少傾向です。そのため、勤務医としてではなく、既存のクリニックを継承して開業する医師は、今後も増えると想定されます。
クリニック継承の種類
クリニック継承には、第三者継承と親族間継承の2種類があります。それぞれ詳しくみていきましょう。
第三者継承
第三者継承とは、親子関係や親族関係ではない第三者がクリニックを引き継ぐことです。
血縁関係であれば「引き継がなければならない」「診療方針は継続しなければならない」などの制約が多い場合も考えられるでしょう。第三者継承であれば、交渉次第ではある程度の自由があります。
万が一条件のすり合わせがうまくいかない場合は、契約を見送り、他のクリニックを探す選択肢もあるため、精神的な負担が軽減できるでしょう。
親族間継承
親族間継承とは、クリニックの医師の親族間で引き継ぐことです。
親族間継承では、これまでの診療方針や理念、クリニックに対する信念などを引き継ぐのが一般的です。仲介手数料が不要なケースもありますが、贈与税や相続税などは税理士に確認する必要があります。
クリニック継承のメリット
クリニック継承のメリットは、主に以下の3つです。
-
費用を抑えられる
-
事業が軌道に乗りやすい
-
スタッフを引き継げる可能性がある
それぞれ詳しく解説します。
費用を抑えられる
クリニック継承のメリットの1つは、開業のための費用を抑えられることです。
クリニック継承では、新たにクリニックを開業するために土地を購入したり、建物を建てたりする費用が減る場合があります。既存クリニックで使っていた医療機器も引き継げる場合、クリニック開業の初期費用を大幅に抑えられるでしょう。
事業が軌道に乗りやすい
クリニック継承の場合、これまで来院していたかかりつけの患者も引き継ぐケースがほとんどです。そのため、開業した当初からある程度の来院患者や医療費などの収益が見込め流ため、事業が軌道に乗りやすい点がメリットだといえます。
親族間継承では、一定期間、現院長と共に診療を行い引き継ぐケースがあります。共に診療を行っている間に患者との信頼関係を築きやすく、患者の定着率をさらに高める効果が期待できるでしょう。
スタッフを引き継げる可能性がある
クリニック継承では、それまで働いていた看護師や事務スタッフなどを引き続き採用できるケースがあり、新たに募集する手間やコストがかかりません。
既存のクリニックでの勤務年数が長ければ業務に慣れているため、1から教える手間も省けるだけでなく、スムーズに仕事を進められます。ベテランスタッフは、開業して間もない医師にとって、頼り甲斐のある存在となります。
また、患者にとっても、顔馴染みのスタッフに対応してもらえるという安心感につながるでしょう。
クリニック継承のデメリット
クリニック継承のデメリットは、主に以下の3つです。
-
患者離れのリスクがある
-
スタッフの離職のリスクがある
-
物件改修が必要な場合がある
患者離れのリスクがある
かかりつけの患者を引き継げるメリットがある反面、診療方針の変更によって、患者が離れてしまう可能性はゼロではありません。
前院長を信頼してクリニックに来院していた場合「前の先生はもっと親身に対応してくれた」と、違いに違和感を覚えて離れてしまうことも考えられます。患者離れは経営に直結するため、診療方針を事前に理解しつつ、患者満足度を高めるための対策を検討することが大切です。
スタッフの離職のリスクがある
クリニックの継承では、患者だけでなくスタッフ離れのリスクも挙げられます。
前医師の診療方針や理念が変わると、これまで働いてきたスタッフは不満を感じて離職してしまう可能性があります。とはいえ、医師との相性にもよるため、事前に診療方針・雇用条件など話し合う機会を設けることが大切です。
物件改修が必要な場合がある
クリニックによっては、引き継ぐ建物や医療機器の老朽化がひどく、修繕や買い替えが必要なケースもあるでしょう。
老朽化の程度によっては、大がかりな改修工事が必要となったり、医療機器を購入したりしなければならず、多額の費用がかかる可能性も考えられます。
事前に物件や医療機器・設備の状態を確認しておくことが大切です。
クリニック継承の費用相場
クリニック継承にかかる費用相場は、2,000万〜4,000万円とされています。ほかに、仲介業者への手数料や、当面の運転資金も必要です。物件の改修や医療機器の買い替えが必要な場合、さらに費用がかかると想定されます。
仲介手数料は会社によって異なるため、複数社に見積もりを依頼し、自院にとって費用の負担とならないか比較検討しましょう。
クリニック継承の流れ
一般的なクリニック継承の流れは、以下の通りです。
-
クリニックのコンセプトを検討する
-
仲介業者を決めて契約する
-
土地などの条件に合うクリニックを探してもらう
-
継承先のクリニック内見・院長との面談を行う
-
継承先を決めて条件を調整する
-
継承先と契約を結ぶ
-
買収監査をする
-
最終条件を調整し、最終譲渡契約書を結ぶ
-
継承を実行する
-
継承後、保健所に診療所開設届を提出する
上記はあくまでも目安となります。具体的な流れや必要な期間については、仲介業者の担当者に確認してみましょう。
クリニック継承で失敗しないための注意点
クリニック継承で失敗しないために、以下の3点に注意が必要です。
-
事前に経営理念や診療方針を確認する
-
地域との連携体制を構築しておく
-
コンサルタントに依頼することも検討する
それぞれ解説します。
事前に経営理念や診療方針を確認する
クリニック継承において、前院長の経営理念や診療方針を事前に確認しておくことが重要です。
診療方針を大きく変更すると、これまで来院していたかかりつけの患者や、長く働いていたスタッフが離れてしまう可能性があります。とはいえ、開業にあたってどうしても譲れない条件もあるでしょう。
クリニック継承では、譲る側と引き継ぐ側で条件が譲れなかったり、言いたいことが言えなかったりして次第に関係性が険悪になってしまうことも考えられます。
トラブルを避けるためにも、お互いの意向や条件のすり合わせのための時間をしっかり設け、納得できる継承条件を決めるようにしましょう。
地域との連携体制を構築しておく
クリニックで提供できる治療には限界があり、入院・手術・精密検査などが必要になった場合に備え、地域の医療機関との連携が必要不可欠です。
また、状況によってはケアマネージャーの介入や訪問看護・訪問介護などのサービス提供を行うケースも考えられます。その場合、地域支援センターや訪問看護ステーションなどとの連携も必要です。
そのため、クリニック継承前から少しずつ医師会などと良好な関係を構築しておくと良いでしょう。
コンサルタントに依頼することも検討する
クリニック継承にあたって、労務や税務などさまざまな手続きが必要となります。医師として働きながら、自ら手続きを行う時間や労力がかけられない方は、専門のコンサルタントに依頼することも検討すると良いでしょう。
クリニック継承には専門知識が必要です。継承や開業の手続きや流れ、法律などにも精通しているコンサルタントを活用すれば、スムーズにクリニック継承を進められるでしょう。
また、継承元と条件が合わない場合、トラブルに発展するケースも考えられます。当事者だけでは解決できない問題や、言い出しにくいことがある場合など、コンサルタントがどちらにも納得のいくような条件を提示し、解決に導いててくれるでしょう。
一体型・連動型ならエムスリーデジカル
クリニック継承に伴い、院内のクラウド化やレセコン・電子カルテの導入を検討されている方は、弊社エムスリーデジカル株式会社の製品も選択肢の1つとして活用できます。
弊社では、クラウド型電子カルテ「エムスリーデジカル」を提供しています。電子カルテレセコン一体型、ORCA連動型に対応しており、レセコン単体、電子カルテ単体でのご提供も可能です。レセコン単体では初期費用無料、月額14,800円(税抜)からコストを抑えて利用開始できます。オプションで既存のレセコンからのデータ移行も可能です。無料体験も可能なので、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
すでに開業しているクリニックを譲り受けて開業するクリニック継承は、新規開業に比べて初期費用を抑えられ、事業を軌道に乗せやすいというメリットがあります。
とはいえ、診療方針の変更により既存スタッフやかかりつけ患者が離れてしまうリスクや、物件によっては改修費用などの負担がかかるケースも考えられます。
クリニック開業で失敗しないためには、事前に前院長と診療方針や継承条件のすり合わせをしっかり行う必要があります。必要に応じてコンサルタントを活用すれば、スムーズなクリニック継承につながるでしょう。
弊社では、クラウド型電子カルテ「エムスリーデジカル」を提供しています。電子カルテ単体・レセコン単体・一体型いずれも提供可能です。5,000施設以上の導入実績、100以上のサービス・機器と連携実績があり、利用環境に合わせてご提案できます。
レセコン単体では初期費用無料、月額14,800円(税抜)から利用が開始でき、オプションで既存レセコンからのデータ移行も可能です。サポート体制も万全ですので、お気軽にご相談ください。