オンライン診療とは?背景や目的、導入するメリット・デメリットを解説 / エムスリーデジカル株式会社

オンライン診療とは?背景や目的、導入するメリット・デメリットを解説

2024年4月4日

オンライン診療とは?背景や目的、導入するメリット・デメリットを解説

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、オンライン診療を導入する医療機関は増えつつあります。近年、医療DXが推進されている中、自院でもオンライン診療の導入を検討している方は多いのではないでしょうか。

この記事では、オンライン診療の概要やメリット・デメリット、導入に必要なものなどを解説します。

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目次

オンライン診療とは

オンライン診療とは、対面による診察ではなく、パソコンやタブレット、スマートフォンなどの情報通信機器を通じ、遠く離れた場所でもリアルタイムで診察・診断を行うことです。

厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、オンライン診療を以下のように定義しています。

遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為

出典: 厚生労働省|オンライン診療の適切な実施に関する指針

オンライン診療に対応したデバイスやインターネット環境があれば、へき地や離島でもリアルタイムで診察できます。

システムによって異なりますが、主な機能は以下の通りです。

  1. 診察の予約

  2. Web問診

  3. 処方箋発行・送信

  4. 決済 など

オンライン診療が推進されるようになった背景

オンライン診療が推進されるようになった背景には、離島やへき地などアクセスの悪い地域における医療格差が挙げられます。

1997年、医師が偏在する地域でも適切な治療が受けられるよう、遠隔診療の通知が出されました。2020年には新型コロナウイルス感染症の流行によって規制緩和され、オンライン診療体制の整備が推進されています。

国内ではICTを活用した医療DXが推進されており、今後もオンライン診療体制の構築が進められるでしょう。

オンライン診療の目的

厚生労働省では、オンライン診療の目的として以下の3つを掲げています。

  1. 患者の日常生活の情報も得ることにより、医療の質のさらなる向上に結び付けていくこと

  2. 医療を必要とする患者に対して、医療に対するアクセシビリティ(アクセスの容易性)を確保し、よりよい医療を得られる機会を増やすこと

  3. 患者が治療に能動的に参画することにより、治療の効果を最大化すること

出典: 厚生労働省|オンライン診療の適切な実施に関する指針

オンライン診療の実施にかかる研修

オンライン診療を実施する医師は、厚生労働省が指定する研修の受講が義務付けられています。

オンライン診療にかかる研修に関して、厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に明記されている内容は、以下の通りです。

オンライン診療の実施に当たっては、医学的知識のみならず、情報通信機器の使用や情報セキュリティ等に関する知識が必要となる。このため、医師は、オンライン診療に責任を有する者として、厚生労働省が定める研修を受講することにより、オンライン診療を実施するために必須となる知識を習得しなければならない。
※2020年4月以降、オンライン診療を実施する医師は厚生労働省が指定する研修を受講しなければならない。

出典: 厚生労働省|オンライン診療の適切な実施に関する指針

なお、産婦人科医以外の医師が、初診からオンライン診療で緊急避妊薬を処方するためには「緊急避妊薬の処方に関する研修」を別途受講しなければなりません。

オンライン診療の実施にかかる研修について、研修プログラムの概要・申し込みに関する情報は、以下のサイトに記載されているので参考にしてください。

出典: 厚生労働省|オンライン診療研修実施概要

オンライン診療のメリット

オンライン診療は、医療従事者側・患者側の双方にメリットがあり、主なメリットは以下の通りです。

  • 医療従事者側

    1. 診療の質向上が期待できる

    2. 業務効率化につながる

    3. 院内感染のリスク軽減につながる

  • 患者側

    1. 離れた地域でも診察を受けられる

    2. 通院負担が軽減できる

    3. 感染リスクを軽減できる

それぞれ見ていきましょう。

医療従事者側①診療の質向上が期待できる

オンライン診療では、離れた場所でもリアルタイムに患者のニーズに沿った医療の提供や最適な治療ができるため、診療の質向上が期待できるでしょう。

介護施設に入所している寝たきりの人や認知症の人などが医療機関を受診する際、付き添いのスタッフが必要です。診察の際、施設スタッフがうまく症状を伝えられなければ、患者に適した治療を提供できないことが考えられます。

こうしたケースにオンライン診療を活用すれば、動画や画像で患者の症状をリアルタイムで確認できるため、適切な診断や治療につながりやすくなります。

また、ビデオ通話で患者が生活する環境を把握できるため、日常生活での課題や改善点も見出しやすくなるでしょう。

医療従事者側②業務効率化につながる

オンライン診療では、予約の時点で問診を記入したり、診察の前にバイタルサインなどを測定して送信してもらったりできるため、医師のスムーズな診察につながるだけでなく、事務スタッフの業務効率化にも役立ちます。

訪問診療や往診などにオンライン診療を活用すれば、患者の自宅や施設までの移動時間が削減できます。

医療従事者側③院内感染のリスク軽減につながる

オンライン診療では対面での診療を行わないため、医療機関での院内感染リスク軽減につながるでしょう。

特に新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染リスクが高い状況では、オンライン診療によるメリットは大きいといえます。

患者側①離れた地域でも診察を受けられる

患者側のオンライン診療のメリットとして離れた地域でも診察を受けられる点が挙げられます。

オンライン診療は、インターネットにつながる環境があれば、離れた地域でも医師の診察を受けられます。

「専門医に診てもらいたい」「引っ越しをしてもかかりつけ医の診察を継続したい」といった場合でも、オンライン診療であれば場所を問わず診察を受けられます。

患者側②通院負担が軽減できる

オンライン診療を活用すれば、通院にかかる時間やお金などの負担が軽減されます。

オンライン診療では、予約した診察時間にパソコンやスマートフォンで通信するだけで済むため、診察を受けるために仕事や通学の時間を調整する必要がありません。

介護施設などに入所している人は、状態が悪化した場合でも来院の必要がなく、時間や交通費だけでなく、体力の負担も少なくて済みます。

患者側③感染リスクを軽減できる

オンライン診療は、自宅や施設などで診察を受けられるため、感染リスクを軽減できます。

感染症が流行している時期に医療機関を訪れると、自分や子どもも感染するのではないか、と不安に感じる人は多いでしょう。

オンライン診療を活用すれば、対面に比べて感染リスクは低く、こうした不安が解消されると考えられます。

オンライン診療のデメリット

オンライン診療のデメリットは、主に以下の4つです。

  1. 通信不良によって診察が行えない可能性がある

  2. 対面診療に比べて収益性が低くなる

  3. 診療に必要な情報が不足するリスクがある

  4. 疾患によってはオンライン診療が実施できない

それぞれ解説します。

通信不良によって診察が行えない可能性がある

オンライン診療は、通信不良などの問題によって、診察が行えなくなる可能性があります。

たとえば、ネットワークが不安定で動画が固まってしまったり、途切れてしまったりするケースが考えられます。また、自宅以外の場所では、騒音によって音声が聞き取りにくい状況もあるでしょう。

オンライン診療を実施する際は、あらかじめ患者に対し、環境を整えるよう説明しておくことが大切です。

対面診療に比べて収益性が低くなる

令和4年度の診療報酬改定によって、オンライン診療料は廃止され、情報通信機器を用いたオンライン診療の評価が新設されました。

診療報酬改定によってオンライン診療の初診料が新設されましたが、対面診療288点の約87%である251点と低くなっています。再診料・外来診療料は対面と同様、73点です。

検査料が包括されている医学管理料については、情報通信機器を用いた実施を評価しないとされています。また、以下の3つはオンライン診療の対象外となっています。

  1. 地域包括診療料

  2. 認知症地域包括診療料

  3. 生活習慣病管理料

出典: 公益社団法人東京都医師会|オンライン診療

診療に必要な情報が不足するリスクがある

パソコンやスマートフォンなどの動画を通じて診察を行うオンライン診療では、対面診療に比べて診療に必要な情報が不足するリスクがあります。

モニター越しの診察となるため、触診や全身のむくみがあるかなどの視診も限られます。また、採血や採尿検査、レントゲンなども行えないため、病態によっては対面診療が適しているケースもあるでしょう。

オンライン診療に適した病態には限界があることを常に頭に入れ、対面診療とうまく組み合わせることが重要です。

疾患によってはオンライン診療が実施できない

病態が安定している慢性疾患などの診察には向いていますが、疾患によってはオンライン診療が実施できないケースがあります。

​例えば、レントゲンや呼吸機能検査などが必要なケースや、急性の胸痛、頭痛などの症状がある場合は、対面診療が必要です。

厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の中で、オンライン診療の実施の可否について、以下のように明記されています。

オンライン診療が困難な症状として、一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状」等を踏まえて医師が判断し、オンライン診療が適さない場合には対面診療を実施する(対面診療が可能な医療機関を紹介する場合も含む。)こと。なお、緊急性が高い症状の場合は速やかに対面受診を促すことに留意する

引用: 厚生労働省|オンライン診療の適切な実施に関する指針

オンライン診療を実施するにあたって、事前に「一般社団法人⽇本医学会連合|オンライン診療の初診に関する提⾔」を確認しておきましょう。

一般社団法人日本医学会連合|オンライン診療の初診に関する提言

オンライン診療の流れ

一般的に、オンライン診療は以下のような流れとなります。

  1. 診療予約

  2. WEB問診

  3. 診察

  4. 決済

システムによっては、処方箋の発行なども行えるケースがあるでしょう。
※各クリニックで導入しているオンライン診療ツールによって手順等も異なりますので、実際にオンライン診療の受診を希望する際は各クリニックに手順をお問い合わせください。

オンライン診療の導入に必要なもの

オンライン診療を導入する際、主に必要となるのは以下の通りです。

  1. パソコンやスマートフォンなどの情報通信機器

  2. カメラ・マイク

  3. インターネット環境

  4. オンライン診療用システムやアプリ

  5. 厚生局へ提出する届出書類

Webカメラやマイクは、パソコンやスマートフォンに搭載されていると考えられます。利用する機器に応じて、必要なものを揃えましょう。

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まとめ

新型コロナウイルス感染症による規制緩和や、国内での医療DX推進などの影響もあり、オンライン診療は今後もますます普及すると考えられます。

オンライン診療は、医療者側・患者側の双方にとってメリットがある一方で、診察に適さない疾患があることも理解しておく必要があります。オンライン診療と対面診療をうまく組み合わせながら、質の高い医療の提供を実現しましょう。

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