オンライン診療における処方箋の取り扱いは?流れや注意点を解説
2024年9月4日
オンライン診療の普及に伴い、処方箋の取り扱い方法にも新しいルールが導入されています。パソコンやスマートフォンを通じて行われるオンライン診療では、診察だけでなく、処方箋の発行も可能です。
しかし、適切に処方箋を発行し取り扱うためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
この記事では、オンライン診療における処方箋の取り扱いの流れや注意点について詳しく解説します。
※2024年7月時点の情報です。
目次
そもそもオンライン診療とは
オンライン診療は、医師と患者がビデオ通話や電話などのオンラインツールを利用して診察を行うシステムです。
厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、オンライン診療について、以下のように定義しています。
遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為
オンライン診療は、対面での診察と異なり、患者は自宅などから診療を受けられ、通院の手間や時間を削減可能です。新型コロナウイルスの流行をきっかけに、オンライン診療の需要は急速に増加し、多くの医療機関で導入が進んでいます。
オンライン診療の利便性は高く、多忙な現代人や通院が困難な高齢者にとって特に有益です。また、地方在住の患者が専門医の診察を受ける際のハードルも低くなり、医療の質向上につながるでしょう。
オンライン診療には、対応可能な疾患や初診時対応などに制限があるものの、国内でも様々なオンライン診療サービスが登場しており、今後オンライン診療は一層注目されるでしょう。
オンライン診療における処方箋の取り扱い
オンライン診療では、対面診療とは異なる方法で処方箋の受け渡しが行われます。
対面診療では、患者は診療後に処方箋を受け取り、調剤薬局でその処方箋を渡して薬を受け取りますが、オンライン診療では手順が異なります。
オンライン診療での処方箋取り扱いについては、厚生労働省が2022年9月30日に発表した指針に基づいています。この指針を遵守することで、医療機関と薬局が適切に処方箋を管理し、オンライン診療の質を保つことができます。
以下では、オンライン診療における処方箋の取り扱い方法について詳しく解説します。
処方箋を薬局に送付
予約システムを利用すると、患者は待ち時間を短縮できます。スムーズに診療を受けられるため、診察の流れが円滑になり、患者のストレスが軽減されます。
また、患者自身も混雑状況を把握できるため、混雑していない時間帯を選んで予約できます。これにより、待ち時間のばらつきが少なくなり、患者の満足度向上につながるでしょう。
オンライン服薬指導を希望される旨を記載
オンライン診療において、服薬指導もオンラインで希望する患者がいる場合、医師は処方箋の備考欄に「オンライン対応」と明記します。患者の同意を得た上で、処方箋情報を患者が希望する薬局に送信します。
従来、服薬指導は対面のみ可能でしたが、2020年9月から法改正によりオンライン服薬指導が正式に認められました。
薬剤師の判断や患者の希望により、オンライン服薬指導から対面での服薬指導に切り替えることも可能です。また、オンライン診療で即時に処方箋を手渡せない場合でも、後日対面での服薬指導を行うことができます。
発行した処方箋原本の取り扱い
医療機関は、対面診療・オンライン診療のどちらを実施したかにかかわらず、患者に処方箋原本を渡さず、あらかじめ処方箋情報を送った薬局に原本を送付します。
処方箋原本が届くまでの間、送信された情報を処方箋として扱いますが、医療機関から処方箋原本を受け取った後、薬局は以前に送信された処方箋情報と共に保管します。
オンライン診療での処方から受け取りまでの流れ
オンライン診療では、薬の処方方法として「院外処方」と「院内処方」の2種類があります。現在、日本では国の政策や医療業界の変化により、院外処方が主流です。
以下に、院外処方および院内処方の流れについて解説します。
院内処方の場合
オンライン診療での院内処方の場合、一般的な流れは以下の通りです。
患者がオンラインで診療を受ける
医療機関で薬剤師が薬を調剤する
調剤された薬を患者の自宅に郵送する
かつては院内処方が主流でしたが、近年では医薬分業の推進や薬剤差益の減少により、院内処方を行う医療機関は減少しています。
オンライン診療の場合、診察後に医療機関内の薬局で薬を調剤し、薬を郵送する流れとなります。
院外処方の場合
オンライン診療での院外処方の流れは、以下のようになります。
患者がオンラインで診療を受ける
医療機関は患者が希望する薬局に処方箋情報を送信する(FAXまたはメール)
薬局の薬剤師が患者に服薬指導を行う
調剤された薬を患者が受け取る
患者は薬局に出向いて薬を受け取るか、薬局から自宅に薬を配送するか、どちらかを選択可能です。
オンライン診療で処方箋を発行するメリット
オンライン診療で処方箋を発行するメリットについて解説します。
患者側のメリット
患者側のメリットは、主に以下の2つです。
薬局に足を運ぶ負担が減る
待ち時間の軽減につながる
それぞれ見ていきましょう。
薬局に足を運ぶ負担が減る
院内処方の場合、オンライン診療後に薬が直接患者の自宅に配送されます。患者は薬局に足を運ぶ必要がなくなり、特に体調が悪い時や移動が困難な状況でも、薬を受け取りやすくなるでしょう。
また、通院が難しい遠隔地に住む患者などは、近隣では手に入りづらい薬を手配しやすくなります。
待ち時間の軽減につながる
オンライン診療を利用することで、薬局での待ち時間が削減されます。薬局での受け取りが必要な場合でも、オンラインで事前に処方箋情報が送られるため、薬の準備がスムーズに進み、待ち時間が短縮されます。
仕事や子育て、介護などで忙しい人や、時間に制約のある人でも効率的に薬を受け取ることができます。
医療機関側のメリット
医療側のメリットは、主に以下の2つです。
薬局との連絡業務の効率化につながる
診療効率の向上が期待できる
それぞれ見ていきましょう。
薬局との連絡業務の効率化につながる
オンライン診療で処方箋情報を電子的に薬局に送ることができ、紙の処方箋を物理的に渡す手間が省けます。薬の内容や処方期間の変更なども迅速に対応でき、医療スタッフの業務負担が軽減されるでしょう。
さらに、情報のやり取りが電子化されるため、誤解やミスを減らし、より正確で迅速な医療サービスの提供が可能になります。
診療効率の向上が期待できる
オンライン診療で処方箋を発行することで、対面診療に比べて診療効率の向上が期待できます。特に、慢性疾患のフォローアップや軽度の症状に対する診察では、オンライン診療が有効です。医師は限られた時間を有効に使い、より多くの患者を診察することが可能になります。
また、待ち時間の削減により患者満足度も向上し、クリニック全体の運営効率も改善されるでしょう。
オンライン診療で処方箋を発行するデメリット
オンライン診療には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
例えば、初診の場合は対面診療が必要なため、すべての診療がオンラインで完結するわけではありません。初診以外でも、重篤な症状や緊急性のある場合は対面診療が求められるケースがあります。
また、オンライン診療はインターネット環境に依存しているため、通信環境が不安定な地域では、オンライン診療を利用しづらい状況になるケースがあります。また、デバイスの操作に不慣れな患者にとっては利用が難しく感じることもあるでしょう。
さらに、一部の薬剤はオンラインでの処方が制限されており、特に管理が厳しい薬剤は対面での診察が必要です。すべての薬がオンライン診療で対応できるわけではありません。
これらの点を考慮し、オンライン診療の導入や利用を検討する必要があります。
オンライン診療で処方箋を発行する際の注意点
オンライン診療で処方箋を発行する際、以下の点に注意する必要があります。
処方箋の備考欄に「オンライン対応」と記載する
診療ガイドラインに準じて行う
取り扱いに制限のある薬剤を把握しておく
8日以上の処方は禁止されている
それぞれ解説します。
処方箋の備考欄に「オンライン対応」と記載する
2022(令和4)年9月30日に交付および施行された「オンライン服薬指導の実施要領」では、オンライン診療後に処方箋を発行する際の、具体的な手順が記されています。
まず、患者がオンラインでの服薬指導を希望する場合「オンライン対応」と処方箋の備考欄に記載しなければなりません。この記載により、薬局側がオンライン対応であると認識し、適切な対応を取れるようになります。
診療ガイドラインに準じて行う
オンライン診療で処方箋を発行する際には、診療ガイドラインを遵守することが求められます。特に日本医学会連合の「オンライン診療の初診に関する提言」では、オンライン診療の初診に適さない症状が明示されています。
以下はその一部です。
症状 | |
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呼吸器系 |
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循環器系 |
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消化器系 |
|
腎尿路系 |
|
その他 |
|
オンライン診療を実施する際には、こうしたガイドラインを厳守し、医師は適切な診療を提供し、患者の状態に応じた適切な対応を行うことが求められます。
取り扱いに制限のある薬剤を把握しておく
厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」によると、オンライン診療の初診では、麻薬や向精神薬の処方は禁じられています。こうした薬剤は心身への影響が大きく、濫用や転売を防ぐ目的があるためです。
ただし、向精神薬については特定の講義を受講した医師に限り、処方が認められています。その他、日本医学会連合の提言では、初診での抗菌薬やステロイドなどの投与も慎重に行うべきとされています。
医師は、患者の安全を最優先に考え、適切な薬剤管理を行う必要があり、状態に応じて柔軟に対応することが大切です。
8日以上の処方は禁止されている
厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、初診のオンライン診療において、基礎疾患の情報が十分に把握できていない患者には、8日以上の処方を行わないように提言されています。これは、大量の薬剤が一度に処方されると、違法な転売や重複処方による過剰摂取につながるのを防ぐためです。
さらに、重篤な副作用が懸念される患者には、特に慎重な対応が求められ、処方後の服薬状況を綿密に確認必要があります。基礎疾患の情報が把握できていない患者には、安全管理が必要な薬剤の処方も避けるべきとされています。
まとめ
オンライン診療の需要が増加する中、その導入に伴い、処方箋の取り扱いについての理解がますます重要になるでしょう。オンライン診療の導入を成功させるためには、診療の流れや処方箋の発行・管理方法についての知識をしっかりと身につけておくことが大切です。
処方箋の取り扱いについて法令やガイドラインを遵守し、安全で適切な医療サービスを提供することが求められます。適切な知識を持つことでオンライン診療の導入と運営がスムーズに進み、患者の満足度と信頼を高められるでしょう。
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